みかんのゴミ捨て場

方向性は台風よりも定まってないです!!

宇治抹茶クリームパン

最近私が感動したことの一つとして、部活の後輩の天才的な選択が挙げられる。

それは部活終わりのことだ。食べ盛りの学生としては、昼に食べるお弁当だけで運動部での激しいエネルギー消費を賄えるとは思えない。よって帰り道でパンの買い食いをするのだ。

私が買い食いをする店では、タイムセール時にパンを2つ買うことで割引するという、男子高校生であってもなくても嬉しい仕組みが敷かれている。そのため私は部活帰りにはパンを2つ買うことがルーティーンとなっている。普段そこでは少しでもすきっ腹を満たすために、固くて沢山噛まなくてはいけないようなパン、つまりはガーリックフランスを食べて満腹中枢を刺激している。あとひとつは自由枠としてその時に食べたい物を好きに買っているのだった。

そしていつかの部活からの帰り道のことである。その日私は無性にコロッケパンが食べたかったため、まずコロッケパンを手に取った。そしてもうひとつはいつものガーリックフランスをこなれた手つきで取ろうとした瞬間、後輩の手が私の目指そうとしたパンとは別の方向へ行き、迷わずあるパンを手に取った。そのパンと彼の選択は自分の狭苦しい固まりきった選択肢をぶち壊し、私に、ニュートンが落ちているりんごを見た時や、アルキメデスエウレカと叫びながら裸で街を走り回った時に近しい衝撃を与えた。

後輩が選んだパンとは「宇治抹茶クリームパン」なのであった。なんだそんなものかと思われる方もいらっしゃるだろう。しかし、その選択は当時の私にとって天地がひっくり返る程のショックを与えた事は間違えようのない事実だ。
私がなぜ宇治抹茶クリームパンに対してこのような高い評価を与えているのかということに対してもちろん理由がある。

それは、宇治抹茶クリームパンが持つ糖分だ。運動をした後に人は糖分ではなくタンパク質や脂質を取ることが一般的では無いだろうか。なぜならタンパク質は疲労した筋肉を治すのに不可欠であるし、脂質は他の栄養素と比べてもカロリー効率が高い。にもかかわらず糖分を取るということは一見、非効率的に見えなくもない。しかし、糖分は効率では測りきれないものがある。それは糖の麻薬としての側面だ。糖は違法な麻薬ほどではないにしろ脳から快楽物質を出す。それにより人は幸せになれるのだ。つまり宇治抹茶クリームパンには腹は満たせなくても人を幸せにする力はある。

体の安息より、心の安息をとる。私はそんな後輩の姿にひどく感心したのだ。